【Berry's Cafe版】やっぱり君にはかなわない〜花と光と奏でSS
だから破壊力ハンパないその仕草と表情が、


"俺が食べたいんですけど……"


俺に不埒な思考を頭に過らせた。

だけどそんなことは悟られないように、

「全部いいよ。って言いてぇけど、いくつか酒入ってんのあるし……
これとこれと、…あとこれもダメ」

リキュール入りであろうケーキを指差して、俺はそう答えた。
というのも、今は撮影スタジオの楽屋で、そこの机の上に広げられていたのが“モデルのKOH”への差し入れだったから。
俺のプロフィールは極わずかの人間にしか知らされていないから、俺を“成人”以上だと思っている関係者が多くて、この差し入れもそれが意味していることだった。


『えーー……ベリータルトも?』

俺には相変わらず敬語が抜けていない紫音だったのに、よっぽどそれが食べたいのか、いつになく甘えた口調で聞き返してくる。それが可愛くて、普段からそうだといいのに、とか思うけど……まぁ…たまにだからまだ俺の精神がなんとか保(も)っているのも事実で……

俺はそんなことを考えながら、

「ん?あぁ、ベリーは酒漬けだからな。それ、前に食べたことがあって、けっこうアルコールがキツいし。
俺は大丈夫だったけど、紫音はまだダメ」

何となく紫音は酒に弱そうな気がして、その酔った時のことまで想像が膨らみ、また何となくだけど今みたいな“甘え”が全開で来た時にたじたじになるであろう自分が手に取るようにわかった俺は先にそう牽制した。
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