【Berry's Cafe版】やっぱり君にはかなわない〜花と光と奏でSS

おもい

「お前何してんの？」

紫音の少し後ろに立ち、その目の前にいた女へ向けて放った俺の言葉が、その女の行動を寸前のところで止めた。

俺はその光景から視線を外すことなく、紫音の隣へと移動するために歩を進めた。

数歩先にいた紫音の隣へ立ち、

「その手、何？」

とまた、その女へ確認する。

だけど、俺の質問に答える様子のない女が、

「煌暉……」

とつぶやくのが聞こえて、耳障りに響いたその呼び方に、わずかだが自分の眉間と目元に力が入るのがわかった。


「…………その呼び方やめてくれる？」

今となっては、その名前が紫音以外の女の口から発せられることが疎ましい。

「え？」

それなのに、訝しげな目が俺に向けられて、いかにも何で自分がそんなことを言われるのか理解出来ないといった表情(ｶｵ)を見せてくる。

だけど俺は、そんなことはどうでもよくて、

「それと、俺の彼女に何かする気だった？」

と言葉を続けた。

そしてそう言ったことが、俺の視線を自然と紫音へ移させる。

「大丈夫か？」

様子をうかがうように紫音へ聞いてみたけど、なぜか俺を見つめる瞳と表情が驚きで満ちていて、

『煌暉くん……』

とつぶやいた声でさえ、口が勝手に言ったという感じ……

だから俺はもう一度、紫音へ同じ言葉を繰り返した。

「ん？大丈夫？」
『大丈夫です』
「ん。良かった」

今度はちゃんと返事が返ってきたことが、俺の中にあった心配を緩和させて、安心から口元がゆるみ笑みが漏れた。

そしてまた俺は前方へ視線を戻した。