【Berry's Cafe版】やっぱり君にはかなわない〜花と光と奏でSS
「っ(痛)…………」
突然走った痛みに俺は唇を離し、頭を固定していた方の手の親指を自分の口唇へ運ぶ。そして口の中にわすがに広がった鉄の味に、紫音が俺の口唇を噛んだことがわかった。
「何で噛むの……」
紫音を見下ろして切ない想いでつぶやいた俺を、少し睨むように見上げてくる紫音。
『だって……』
そのまま反論の言葉を述べようとした紫音だけど、それと同時に自分のしたことを俺の口唇に見つけて、すぐに泣きそうな表情に変えて見つめてきた。
「“だって”じゃない。癒して」
『…………』
「ほら。ん……」
黙る紫音を顎先で誘導した俺は、少し屈んで紫音へ近づいた。
俺の胸にあった握られていない方の手のこぶしが開かれて、その指先がゆっくり、そっと、血で滲んでいるであろう部分へと触れてくる。
『ごめんなさい』
そこを見つめながら小さく声に出したあと、紫音は自分の唇を俺のそこへ触れさせた。
すぐに離れた二つの熱。
それを懲りずにまたも追い求めた俺は、もう一度紫音を引き寄せ、胸の中に抱き込んだ。
そんな俺と紫音のやり取りを目の前で凝視したまま相変わらず居続ける女。
だから俺は、
「俺がこうなんのはこのコだけ。
まだわかんねぇなら、もっと教えてやるけど」