【Berry's Cafe版】やっぱり君にはかなわない〜花と光と奏でSS

その時、ざわつき出した到着ゲート。

それに気づいて、さっきまでまだかまだかと何度も見直していたパネルに視線を移す。

そこには、いつの間にか待ち人を乗せた飛行機が着陸していたことを知らせる表示があって、渡英先での回想と、今目の前で起こっていたやり取りに、それだけ時間が経っていたことを俺に教えていた。

そしてその扉が開き、カートに荷物を乗せた人達がまばらながらも出てくるのがわかって、その中にとらえた姿。
自分の目に映し出されたそれだけで、途端に鼓動が早まるのがわかった。


「悪い。“彼女”待ってたんだ」

そう言い、パッと手を離してその場に背を向ける。

だけどその女は、俺に何かを期待していたのか、一瞬で顔色が変わり、俺の発した言葉にもろに嫉妬したような表情を浮かべていた。


"勘違いも行きすぎだろ……俺って、そんな誰にでも声掛けるように見えんのか？掛けたこと無いっての……いや一人だけいる…な"


自嘲気味だった思考はそれを否定する思考に変わって、最後にはまたそれをも否定する思考になった。

そのことが、少し離れた先のその“一人”を目でとらえているにもかかわらず、頭の中にもその“一人”が笑っている顔がまた浮かんでくる。


"俺かなりヤバいな…寝ても覚めてもって言うけど……"


別の自嘲に苦笑する笑みが口元へ浮かんだ。

そんな俺を後ろから刺してくる女の視線。
多分、きっと、自分の容姿に絶対の自信があったんだろう。そんな見た目を確かにしている。

だから“あわよくば”な考えを俺が見事にスルーしたのがプライドに障ったのかもしれない。

だけど俺はそんなことはどうでもよくて………そんなことよりも、


「紫音！」

こっちが何よりも大事。