【Berry's Cafe版】やっぱり君にはかなわない〜花と光と奏でSS
いつか七聖に言われた“冷酷”という言葉。

それが意味することが無意識にも行動に出ていたことに、今さらながら羞恥が湧き起こる。

思わず手のひらで自分の口元を覆い、紫音から外した視線。

「俺かなりヤバくない?自分が思ってた以上だよ……」
『そうですか?私の彼氏なんですから、彼女の私としては嬉しい限りですけど』
「…………彼氏?……彼女?」

その言葉が聞こえて、繰り返すようにつぶやいてからまた紫音に視線を戻すと、

『え!?……違うんですか!?
でも、“俺の彼女”ってあの女(ヒト)に言ってくれましたよね?』

俺のつぶやきをちゃんと拾ってくれた紫音が驚きの表情を浮かべてそう聞いてくるから、

「ぇ………俺…フラれるんじゃねぇの?」

と心の声が音として声に出た。

『え!?』
「え!?」

『………どうしてそう思うんですか?』
「………だって重すぎる告白だったし、……紫音も黙ったままだったじゃん。だから……」
『だから煌暉くんの様子がおかしかったんですね。
私が黙ってたのは、嬉しすぎる幸せに放心してたからですよ』

その言葉に、今度は俺の意識が飛びそうになる。

「嬉しすぎるって……本当に?ひいてない?」
『本当ですし、ひいてません。それに約束もしました。
でもその約束は必要なかったですけど』
「じゃあ何で二人きり?」
『それは、誰の声も耳に入ってこない場所で、私の告白(コエ)も聞いて欲しかったからです』
「……何…それ………」
『何かおかしいですか?』
「泣きそう……」
『フフッ』
「笑うな………マジでヤバいと思ってたし、不安につぶれそうで怖かった」
『ごめんなさい』
「や……そうじゃなくて……謝んなくていい。
俺も押しつけたし、でもそれを幸せって言ってくれたことの方が大きいから………ありがとな」

俺は俺の情けない心情と溢れる想いを言葉にした。

それでもまだ紫音は、そればかりか俺を喜びでいっぱいにしてくる。

『押しつけじゃありません。私も同じ想いですから。
閉じ込められてもいいと思えるほど、煌暉くんが大好き。
危ない者同士ですね。フフッ』

最後はおどけた口調だったけど、ニッコリと微笑んだ紫音が妖艶すぎて、それを見ていた俺は自分の中でプツッと何かが切れるのを感じた。


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