【Berry's Cafe版】やっぱり君にはかなわない〜花と光と奏でSS
「どうにもこうにも静まんねぇわ……」
『え?』
「いや、……俺の事情」
『?』

俺が意味深につぶやくも、それがよくわからないといった感じで傾げられたままの顔。


"いいんだけどさ。……鈍すぎんだろ……"


「紫音は可愛いな」

俺は頭の中で思ったことを、ちょっとだけ嫌味を込めて言ってみた。
だからか、

『可愛くないですよ』

と言いながら、俺から離れて元いた場所に座り直した紫音。

「可愛いよ」

俺はもう一度、今度はいろんな意味を含めてその横顔を見つめながら言い直せば、

『可愛くないんです』

とちょっとムッとした口調に変わった同じ言葉が返ってくる。

「どうかしたのか?」

さっきの紫音じゃないけど、俺はその様子が気になって、同じ言葉で聞き返すことになった。
なのに、

『どうにもこうにも恥ずかしくて………帰りたいです』

なんて、紫音まで俺と同じ言葉で、しかも全く予想もしてなかったことを言い出した。

「は?」


"何?何で?俺何かマズった?"


紫音の言ったことに、頭の中がぐるぐると焦り出す。
心当たりを模索しながら、それでも平静さを保っていたのに、

『押し倒されるのかな…って、………痴女みたい……
恥ずかしすぎるので、帰ります』

紫音からまさかの言葉が漏れ出るのが聞こえてきて俺を驚かせた。


"マジ!?押し倒してよかったのか?
いや、違うだろ俺。そうじゃなくて……
確かにかなりヤバかったけど……あと一年……"


俺が勝手に決めていることで、それを紫音はまだ知らなかった。

俺は立ち上がりかけていた紫音の腕を引っ張り、もう一度その場へ座らせた。

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