虚空を眺めて
担任井上の言葉もむなしく、それ以外の案は出なかった。
出ている案は『メイドカフェ』と『演劇』だ。

「では、この二つの内、やりたい方に手を上げろ」

バンバンバンバン!
担任井上は意味もなく、四回教壇を叩いて言う。
―――ワンパターンだな。

「メイドカフェをやりたい人は手を上げろ!」

担任井上の言葉に真っ先に手をあげたのは、五郎だ。
だが、五郎以外、手を上げるものは存在しない。

「な、なんでだぁっ!?」

五郎はそう叫ぶと、机に突っ伏した。
そのまま嗚咽の混じった鳴き声をあげていた。
しかし、そんな五郎を尻目にクラスメイトは笑っていた。
月彦も例外ではない。

「では、演劇でいいのか?」

念を押すように担任井上が言う。
すると、クラスメイト全員(ただし、五郎を除く)が全員手を上げる。
メイドカフェの時とはエライ違いだ。

「なぜだぁぁぁぁぁっ!!!」

無念!男五郎はその場に、そう叫びながら、席から立ち上がり。
また、机の上に突っ伏す。

「私の勝ちね」

勝ち誇ったように笑みを浮かべる優子。
てか、勝負してたんだね・・・。
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