虚空を眺めて
「冗談だよ」

月彦はそう言って、足を進める。
五郎はブスっとした表情を解くことなくそれについていく。


月彦のクラスに着くと。
五郎はそそくさと、忙しなく一時間目の準備をしている。
まだ、朝のホームルームさえ始まっていないというのに―――。

キーンコーンカーンコーン。
高く響くチャイムの音が学校の中に響き渡る。

月彦はあわてて自分の席に腰を下ろした。

「おはよう! 諸君!」

バン!と、ドアを勢い開けて、学校内一の熱血教師。
井上聡が勢いよく入ってくる。

「起立。礼」

クラスメートの一人がそう言うと、全員席から立ち上がり。
頭を下げて、席に腰を下ろす。

「うん! 元気だな!」

こんな暑さの中、井上先生は暑かった。
余計に暑い。
部屋の中に太陽がもう一つあるようだ。
それだけ、井上先生は『熱い』
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