虚空を眺めて
六時間目。
まだ、部屋の中には夏の気だるい熱気が篭っている。

「はい。生徒諸君席につくのだ!!」

バン!と教室に入ってくると否や、井上先生はそう大声で怒鳴る。
しかし、怒鳴ると言っても、彼の表情はニコヤカだ。
熱血という割には、あまりこの担任が怒ったところを見たものは少ない。
噂では、見たものは帰ってこれないと言う。学園伝説(?)が残っている。

「さて! 君たちは知っているな! 夏休み後にある行事を!」

にこやかに微笑みながら言う。担任井上。
なぜに、先生がそこまで興奮している。

「・・・」

しかし、誰も答えない。
・・・のりはあまり良い方ではないのだ。

「・・・」

にこやかな笑顔のまま固まる担任井上。

「・・・文化祭?」

「その通り!」

おずおずと言う気の弱そうな、眼鏡をかけた男性生徒が言うと。
担任井上は、教壇を片手でバン!と叩き答える。

「そう、夏休み後、つまりは九月になってからだが、文化祭をやることになっている。その文化際についてなのだが・・・何かやりたい物はないかっ!?」

バンバン!と二回連続、教壇を叩く担任井上。
既に、これは以前から続けられていることだ。
その内、教壇が壊れるのでは、と思う。

「メイドカフェ!!」

・・・どこかの馬鹿がとんでもない事を言う。
まぁ、たいていはお調子者の発言だったりする。
そう思って、声の方向を見ると。

「・・・お前」

そいつは意外な人物だった。
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