虚空を眺めて
「なんだ? なんだ?」

担任井上は子供のように無邪気に言ってくる。
それに、気の強いクラス長の女の子が立ち上がり。

「しかし、その様な“メイドカフェ”なんて物は教育の場には不必要・・・いえ、それどころか、そんな物は入れるべきではないと思います」

「な、なんだと! そんなものとは何だ! そんなものとは!」

その言葉に、男―犬山五郎がキレる。
がば、と席から立ち上がり、クラス長をにらみつける。

「そんなものは、そ・ん・な・も・の・よ」

クラス長はずれた眼鏡を、クイっと人差し指で上げて答える。

「な、な、なんだと!! メイドカフェはなぁ―――」

「まぁまぁ」

五郎とクラス長の間に割って入る担任井上。
こう言う時はなぜか、すごく頼りなく見える。

「五郎も落ち着け。クラス長もだ」

「わかりました」

担任井上の言葉に、二人とも同時に互いを睨み付けながら、席に腰を下ろす。
ほっとしたような表情を浮かべながら、教壇へと戻っていく。

・・・もっと、しっかりしてくれ、井上教師。

バンバン!
っと、教壇に戻った途端に、担任井上は教壇を二回叩き。
みんなの視線を買う。

「じゃぁ、他に出し物はないか?」

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