オオカミ御曹司に捕獲されました
「あの……本とマカロンありがとう。マカロン……私ひとりでは食べきれないので、杉本君もどうですか?」

梨花が皿に乗せたマカロンを俺に差し出す。

また声が震えている。

梨花なりに勇気を振り絞っての行動なのだろう。

そんな彼女が愛おしく思える。

「じゃあ、俺はこの水色のもらおうかな。今日の梨花のワンピースと同じ色だね」

皿のマカロンを手に取りにっこり微笑むと、梨花はひきつった顔で笑った。

「あはは……」

笑いながら一歩ずつ後退りする梨花。

確かに挙動不審だな。

梨花は俺から視線を逸らすと、周囲をキョロキョロと見渡しながらそそくさと自席に戻る。

……一緒には食べてくれないわけだ。
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