オオカミ御曹司に捕獲されました
会社のビルの数百メートル手前でおばあさんが道に迷ってて、心配だったから送っていってあげたのだ。

私は祖母に育ててもらったし、他人事には思えなくて……。

面接落とされるのは覚悟してたんだけど、事情を説明すると社長は私ひとりのために時間を取ってくれて、ふたりで三十分も話をした。

仕事の話は全然しなくて、世間話だったなあ。

後日、社長の直筆サイン付きの内定書類が届いたのは驚きだった。

社長と話すのはあの面接以来。

考えてみれば、私がここに就職出来たのは社長と江口課長のお陰なんだよね。

「……これは自分の家で作ったんです」

「それは凄い。ぬか床があるのかな?」

「はい。祖母からもらったのがあって。今日のナスとキュウリはいい具合に出来ました」
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