オオカミ御曹司に捕獲されました
社長はおにぎりの残りをペロリと平らげると、ベンチから立ち上がった。

「美味しかったよ、梨花ちゃん。ごちそうさま」

にこやかに手を振って社長は桜井さんと一緒に去っていく。

私はそんな社長の後ろ姿を見ながら呆気に取られた。

『梨花ちゃん』?

何で‼

胸章してるから“五十嵐さん”って呼ぶならわかるけど、下の名前で呼ぶなんて……。

しかも、息子と同じ“ちゃん”づけ。

すごーく不気味で恐怖を感じるんですけど……。

一体何なの、この親子。

……なんか、一気に食欲なくした。

タッパーの蓋を閉めて片付けようとすると、今度は息子の方が私の前に現れた。
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