オオカミ御曹司に捕獲されました
なるべく関わらないように軽く会釈をして挨拶だけする。

「……お疲れ様です」

小声で言って階段を降りようとすると、佐藤さんの悪意に満ちた罵声が耳に届いた。

「あんたみたいなブスが杉本君の恋人になんてなれるわけないでしょう!」

その声にビクッとして思わず振り返ると、佐藤さんに思い切り胸を押され、バランスを崩した私はフワッと宙に浮いた。

「わあっ!」

強張る身体。

それはほんの一瞬の出来事なのに、それからはスローモーションでゆっくり時が流れて見えた。

佐藤さんは私の恐怖に震える顔を見てニヤリと口角を上げ、悪魔のような笑みを浮かべる。

……手が当たったのはわざと?

そう思うとショックのあまり、私は何も出来なかった。
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