オオカミ御曹司に捕獲されました
やるならもう仕掛けてくるはずだけど、杉本君にその様子はない。

「梨花、どうしたの?手が止まってるけど」

固まっている私に杉本君がクスリと笑いながら声をかける。

「だ……大丈夫だよ。大丈夫」

私は杉本君にというよりは自分に言い聞かせる。

落ち着け、私。

たかがネクタイではないか。

ネクタイの結び目をほどこうとするが、手が震える。

本人がやれば数秒で終わる動作を、杉本君に「ほら、ここからほどいて」とアドバイスを受けながら一分近くかけてほどく。

づ~か~れ~た~。

ネクタイほどくのってこんな疲れるもの?

息が上がってるし、額からどっと汗が出た。

「杉本君、もたついちゃってごめんね」
< 170 / 343 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop