オオカミ御曹司に捕獲されました
12、梨花と過ごす休日ー 学side
「へえ、ここなんだ」

俺は三階建ての白い外観の老人ホームをまじまじと見つめる。

高級感があって、見た目はホテルみたいだ。

うちのマンションから電車を使って四十五分。

横浜の高台にその老人ホームはあった。

右手を怪我してなければ俺が車を運転出来たのだが、休日はあまり乗らない電車も梨花が一緒だとなかなか楽しい。

電車の席が空くと梨花は自分ではなく、俺を座らせようとした。

『杉本君、座って下さい』

手を出して席を勧める梨花に俺は首を横に振った。

『平気だよ。俺が怪我してるのは足じゃないから。梨花が座ったら?』

優しく笑って梨花に言えば、彼女はキョロキョロ辺りを見渡し、『じゃあ、あのおばあさんに』とニコリと笑って数メートル先にいた老女に声をかけた。
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