オオカミ御曹司に捕獲されました
老女は梨花にお礼を言って席に腰を下ろす。

梨花にとってこれはごく当たり前の日常なのだろう。

なんだろうな。梨花の側にいると、心が温かくなる。

これが妹の詩織ならこうはいかない。

席が空けば当然のように自分が座るだろう。

そもそも電車にも乗らないかもしれない。

あいつはすぐにタクシーを使いそうだ。

梨花のように自然に行動できるって凄いことだと思う。

その梨花を育てたおばあさんに会うと思うと、少しワクワクする。

梨花と一緒に老人ホームの建物の中に入ると、彼女はフロントに行き、顔見知りなのか受付の女性に親しげに挨拶した。

「こんにちは、白井さん」

「こんにちは、梨花ちゃん。あら、今日は彼氏と一緒なの?」

「ち、違いますよ、白井さん!彼は会社の同僚です!」

梨花がぎょっとした顔ですぐに否定するが、そんな彼女を見て自然と笑みが溢れる。
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