オオカミ御曹司に捕獲されました
梨花が俺の腕にそっと触れる。

「ああ。どこのコーヒーが美味しかったかちょっと考えてて」

俺は咄嗟に笑顔を取り繕った。

江口さんの事は梨花には言わないでおこう。

「そんなに考え込まなくてもいいのに。杉本君って意外に可愛いところあるんだね」

口に手を当て、梨花がクスッと笑う。

そんな彼女を見てると、なんとも優しい気持ちになる。

「可愛いって言われたのは初めてだな」

梨花の言葉には裏がない。だから、他の人に言われればムッとするような言葉も、彼女の口から言われると素直に受け入れられる。

「あっ、ごめんね‼嫌だった?」

俺の台詞を誤解したか梨花が慌てて謝る。

「いや、むしろ梨花に言われると嬉しいよ。今みたいに遠慮なく言ってくれるといいな。さあ、行こう」
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