オオカミ御曹司に捕獲されました
俺が梨花の腰に手を当てると、彼女の身体がビクッとなった。

「す、杉本君!」

梨花が頬を赤く染めて抗議するが、俺は手を退けなかった。

「右手怪我してるし、この方がバランス取りやすいんだ」

「え?そうなの?じゃあ……仕方ないよね」

自分を納得させるように呟いて、ぎこちなく歩き始める梨花。

こんな嘘をあっさり信じるなんて、ホントどこまでお人好しなんだろう。

俺を警戒しているようで詰めがまだまだ甘い。

そんな彼女だからこそ、俺が守らなきゃって思えてくる。

談話室に着くと、三人の老女がソファーに座り、コーヒーを飲みながら談笑していた。

「おばあちゃん~」

梨花が右端に座っているおばあさんに手を振りながら声をかける。

梨花のおばあさんは小柄で、笑顔が素敵な人だった。
< 214 / 343 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop