オオカミ御曹司に捕獲されました
「江口さんは、世話好きな女の子がタイプって前に言ってたが」

俺は妹に向かって手で口を隠し、声を潜める。

高飛車な妹は、江口さんの前だと急に大人しくなる。

江口さんを好きなのがバレバレ。

「それ、本当ですの?」

悠長にビールを飲んでいた妹が目の色を変えて俺に聞き返す。

普段ならこの程度の嘘はすぐに見破るのに、恋は盲目とは良く言ったものだ。

「こんなとこで江口さんと話す機会を窺うくらいなら、梨花を手伝った方がポイント高いと思うよ」

「私、手伝って来ますわ」

ビールジョッキをコトンとテーブルに置くと、妹は立ち上がって梨花を手伝いに行く。

「梨花さ~ん、それ私が運びますわ」
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