オオカミ御曹司に捕獲されました
妹が梨花の手からグラスの乗ったお盆を奪う。

「詩織ちゃん、大丈夫?」

「任せて下さい。このくらい私にも……きゃあ‼」

自分の足に躓いたのか、妹は持っていたお盆をガシャンと落とした。

「わ~、詩織ちゃん、大丈夫?すみませ~ん、布巾貸して下さい~」

横にいた梨花が店員に声をかける。

「……やっぱりこうなるか」

あたふたしている妹を眺め、手を額に当てながら苦笑する。

「お前、結構酷くないか?」

上座にいた江口さんが、席を移動して俺の隣に腰を下ろす。

「杉本、誰が世話好きな女がタイプだって?」

江口さんが横目でギロリと俺を睨みながらチクチク言う。

「地獄耳ですね?」

俺は悪びれた様子も見せず、クスリと笑った。
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