オオカミ御曹司に捕獲されました
普段見ないような優しい顔で、江口さんが梨花の肩をそっと撫でる。

「こうなると後が大変なので、連れて帰ります」

俺は立ち上がると、江口さんから梨花を引き剥がし、彼女を抱き上げた。

「気を付けて帰れよ」

江口さんは説教じみた事は言わずに軽く手を振る。

「はい。江口さん、申し訳ないのですが、うちの妹の事お願いします」

「調子が良すぎるぞ」

ギロッと俺を見据える江口さんの文句も俺は軽く受け流した。

「でも、江口さんは面倒見がいいですからね。任せて安心ですよ」

ここは逃げるが勝ち。

それに、俺だってそれなりに世間知らずの妹の事は心配してるのだ。
< 285 / 343 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop