オオカミ御曹司に捕獲されました
いつも俺が席を外してる時に書類を俺の机に置いておくというのが彼女らしい。

だから小人のようだと思っているのだが、彼女は明らかに俺を避けている。

いや、俺のことを怖がっていると言った方がいいだろう。

資料のお礼に食事に誘っても彼女は怯えた顔で俺から視線を逸らし、『祖父が亡くなって』とか『祖父が危篤で』とか理由をつけていつも断る。

せめて他の親族を出してくれればまだ信憑性はあるのだが……。

『祖父が亡くなって』は四回は言われた。

一体祖父は何人いるんだと彼女に突っ込みたくなる。

仕事は正確なのに、仕事以外では結構抜けている彼女。

その彼女……五十嵐梨花は今俺の腕の中で震えている。
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