オオカミ御曹司に捕獲されました
ダメだ。

顔の熱が引かない。

落ち着け、落ち着け。

こんなに動揺してたら、杉本君に私の気持ちなんかすぐにバレちゃう‼

「梨花ちゃん、顔が赤いが大丈夫かね?」

社長が心配そうに聞いてくると、私は笑顔を張りつけて言葉を返した。

「……大丈夫です。今日はとっても胸が一杯で」

私の咄嗟の言い訳を周囲は信じてくれたみたいでそれ以上聞かれることはなかった。

それからみんなでデザートを食べると、父とは連絡先を交換し、幸福感で一杯の私は杉本君とタクシーで帰宅する。

父と兄に会えてウキウキしていた私は、ルンルン気分でマンションのエントランスに続く階段をスキップしながら上る。

「梨花、そんなに跳ねてたら危ないよ」
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