オオカミ御曹司に捕獲されました
やっぱり起きてたの?

「無理……」

私は視線を逸らして逃げようとしたが、杉本君はそれを許さなかった。

「強情だな。俺が寝てると素直になるのにね」

軽く溜め息をつきながら言うと、杉本君は私に顔を近づけそっとキスを落とした。

ふわりと彼の唇が当たって、驚きで目を見開く私。

私達の周りだけ、時間が止まったような気がした。

彼との最初のキスは衝撃的なベロチューだったけど、今のキスはとても優しいキスで……何故か目頭が熱くなった。

目が涙で潤む。

「そういう目で男を誘惑しないの。止められなくなる」

杉本君は自嘲めいた声で囁くと、私の手を掴んで歩き出す。

彼に手を引かれた私は、頭がパニックのまま無言で彼についていった。
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