Rain Days
__ギュッ__


あたしは、ヒデのことを抱き締める。


「ヒデは、独りじゃないよ」


そんな気休めにしか過ぎない言葉をかける。


「俺の女になってくれないのに、抱き締めてはくれるんだ」

「此間のお礼」


あの日、あたしはヒデに救われた。

だからヒデが温もりを求めるなら、与えてあげたい。

こんなことしかできないけど、温もりは伝わったはず。

どれくらい、そうしていたかわからない。

ヒデが離れるまで、抱き締めた。


「良い女」

「変な奴じゃなかったっけ?」


ヒデはそっと、あたしの体を離すと、またイタズラな笑みを零した。


「ホント、あおいみたいな女に初めて会ったよ」

「今まで、どんな相手と遊んできたのよ」

「バレた?」


バレバレ。

< 54 / 167 >

この作品をシェア

pagetop