料理修行 〜14年目の永遠の誓い 番外編(2)〜
料理修行
「お願いします!」
4月、オレは自宅の台所で、小皿に味噌を溶いたばかりの味噌汁を入れて、おふくろにスッと差し出した。
具は、ネギと豆腐とワカメ。
「味、濃すぎよ」
「え!? どこが!?」
ただいま、絶賛、婿入りのための料理修行中。
婿に行く先は、恋人ハルの家。
隣の家なのだから、ハルの家で修行すれば良いのかもしれないけど、プロポーズに失敗した関係で、現在、「結婚」の二文字は禁句状態。
けど、結婚を諦める気がないオレは、コッソリ、裏でできることを続けていた。
プロポーズの根回しを、ハル抜きで行った結果、ハルに拒否られるという大失態の後だ。
ちゃんとハルの気持ちを考えて行動する大切さは重々承知していたけど、ハルのために料理を覚えるくらい、
別に大丈夫だよな?
小皿に味噌汁を注ぎ、自分でももう一度味見する。
うん。うまい。
「……こんなもんじゃない?」
何かないかと頭を悩ませた結果、専業主婦のおふくろに料理を習うことを思いついたのは、ハルに断られた一週間後。
おふくろは笑いながら、
「まさか、婿に出す息子に料理を教えることになるとはね」
と言い、包丁の握り方や出汁の取り方から叩き込んでくれた。
調理実習くらいしか、まともにやっていなかったせいで、何度もおふくろにバカにされつつ、それでも、やっと褒めてもらえるようになってきたんだ。
これだって、鰹出汁がよく効いてて、うまいよな?
味にしても、そんなに濃いとは思えない。
オレ的には、割とおふくろの味に近づいて来た気がするんだけど……。
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