国王陛下の独占愛
「先生を家の中まで運ぶよ」
「ありがとうございます タピカさん」
荷馬車の荷台に横になっている祖父のクルトをタピカが抱きかかえ
部屋のベッドまで運んでくれるのを、ソリは見守っていた。
飼い犬のシルバーが飼い主が帰ってきたことを喜ぶように、軽い足取り
でついてくる。
今日は、月に一度、両親の墓参りと神殿に詣でる日だった。
足の悪い祖父のクルトは、もう随分と高齢で、話す言葉も根気よく
聞き取らないとわからない。
両親を早くに亡くし、ソリはこの母方の祖父、クルトとずっと二人暮らしだ。
帰っていくタピカを見送り、居間にもどったところで、居間の窓から
町外れの宿屋兼食堂の使い走りをしている小僧が、必死に走って
庭に入ってくるのをソリは見た。
「どうしたのかしら、今日は月一回の墓参りで、お店は休むって
知ってるはずなのに」
ソリがかたわらで姿勢良く座っている、飼い犬のシルバーに話しかけると
シルバーはピクリと耳を動かした。
すぐに、ドンドンと玄関の戸が強くたたかれた。
扉を開けたソリに、はぁ、はぁと息をきらしながら、
小僧がつっかえつっかえ言う。
「国王様が......宿屋にきて......そ、それで、ソリを呼んでこいって
旦那さんが.....」