国王陛下の独占愛
国王がムスカの砦へ出向く日を一週間後と決める合議が終わりに
近づいたところで、領相のザクロスが口をひらいた。
「実は、妙な噂を耳にしましてな」
「妙な噂?ああ、私も耳にしました」
ザクロスの言葉を聞いた民相のヒュウルが、ニヤニヤ笑いを浮かべる。
席を立とうと、目の前に広げていた書類をそろえていたセヴェリは
手を止めて領相を見た。
そんなセヴェリを見つめ返して、ザクロスは再び口をひらく。
「陛下お抱えの薬師の娘が、陛下をたぶらかし、それで陛下は
お后を選ばれないのだとか」
「后選びを中断しているのは、隣国ダコスとの今の状態を
考えてだ。」
セヴェリがそういうと、ザクロスは神妙な顔をした。
「戦があるかもしれないという不安定な今だからこそ、
后が決まり、より王室が安定することが大切なのでは
ありませんかな」
「......」
「妙な噂を払拭するためのも、その薬師の娘を遠ざけられること
をおすすめします」
セヴェリの顔がこわばったのを見て、ザクロスは、口許に笑みを
うかべた。
「このままでは、批判は陛下にもおよびましょう。
娘を城から出し、陛下が何事もないのだと示されれば
噂はすぐにおさまるかと思います」