国王陛下の独占愛

 ザクロスめ!
 
 合議の間から執務室の戻る回廊を大股で歩きながら、セヴェリは
 歯をくいしばった。

 ザクロスはまだソリのことを諦めていなかったのだ。

 ザクロスの言う通りにソリを王城からだせば、すぐにソリの命を
 狙うだろう。


   「陛下!」


 セヴェリの後ろをパルヴォが短い足を懸命に動かして追ってくる。

 執務室の戸を乱暴に開け、そのまま執務机まで歩くと、セヴェリは
 バン!と乱暴に机上を叩いた。

 そして、遅れて入ってきたパルヴォの方へすごい勢いで振り返ると
 怒鳴った。


   「ソリのことを悪く噂する者達に処罰をあたえれば、
    この馬鹿な騒動はおさまるか!」


 その言葉を聞いたパルヴォはぎょっとした顔をすると言った。


   「とんでもありません、陛下!そのようなことをすれば
    噂を真実にするばかりでしょう」

   「しかし、城からだせばソリの命が危ない」

   「かといって、領相殿の言われる通り、ソリ殿を遠ざけない限り
    噂はおさまらないでしょう」


 パルヴォの言葉にセヴェリは机の上に置いた手をぎゅっと握った。
 
 そんなセヴェリに向かってパルヴォがそっと声をかける。


   「陛下......陛下がいくら想われても、ソリ殿が貴族でないかぎり
    側妃となさる他に道はありません。
    薬師として側に置くのも、側妃として側に置くのも、陛下が
    后を迎えられればできること、どうか御心をお決めください。
    あなたはこの国の王なのですから」
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