国王陛下の独占愛

   「何故でしょう?」

   「何故でもだ、どうしたんだ?何故、突然そんなことを言う?」

   「城で噂されることに疲れました。少し離れたほうがいいと思った
    のです」

   「大丈夫だと言っていたではないか、辛くはないと」


 本当に辛くなどない、自分が酷く言われることなどどうでもいい。

 でも、セヴェリが責められるのは辛い。


   「今、陛下は何でも言って良いと仰いました」

   「それとこれは、別だ!」


 湧き上がってくる悲しみをこらえ、ソリはしっかりと顔をあげると
 セヴェリを見た。


   「瑣末なことに拘って、陛下は今、全体を見ることを忘れているのでは
    ありませんか、国王としての務めはなんですか?
    私は陛下のためにお茶を煎れてきました、でも、陛下が一杯のお茶
    にこだわり、国王としての務めをはたさないのならば、
    私は、もうお茶を煎れることはできません」


 力強い瞳だった。

 薄い藤色の瞳が自分をまっすぐに見つめ、セヴェリは言葉を失った。



 ずいぶん長い間、二人は見つめあったままでいた。

 長い沈黙をやぶったのは、セヴェリだ。


   「もし城からでるというのなら、祖父のいるベルススに送るより
    安全な道が他にはない。四六時中、警護のものがはりついて
    いるような生活はいやだろう。
    それでも城をでるというのか」
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