国王陛下の独占愛
(12)

   「ソリをベルススに送るのには、駅馬車をつかう。どこでどんな目が
    光っているかわからないからな。
    誰にも告げず、当日、城を出て城下で駅馬車をひろわせるように。
    そしてその駅馬車の後から、ムスカ砦にむけて我々も出発だ。
    途中まで道はいっしょだから、気づかれぬよう警護するためた。
    そのようにすべての手配を頼む。」


 そうセヴェリはトゥーレに告げた。




 その日、ソリは城下に買い物に行くのだと言って、城をでた。

 そして密かに駅馬車に乗り込む。

 怪しまれないように、小さなカバンひとつ持っただけ。

 何一つ持ち出せず、すべては城においてきた。

 初めての恋心も。

 あれから、セヴェリに呼ばれることはなく、パルヴォからベルススへ行く
 方法を教えられ、慌ただしく城を後にした。

 セヴェリに一度も会うこともなく。

 馬車に揺られながら、これでいいのだと、ソリは何度も自分に言い聞かせた。

 でも、溢れてくる涙はどうしようもなかった。

 セヴェリの姿ばかりが、浮かんでくる。

 威張った顔、怒った顔、からかう声、優しくソリを見る青灰色の瞳......。

 馬車は冬枯れの木立の中を走っていく。

 ソリは窓から、その寂しい景色を眺めながら、涙を流し続けた。
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