国王陛下の独占愛

 頬にふれているソリの手をセヴェリが上からそっとにぎり、口許にもって
 いく。

 そして指先に唇でふれた。


   「いつか、私がソリを理解し側にいると言ったのを覚えているか」

   「はい、でも陛下はすぐに冗談だと......」

   「それが本心だとしたら」

   「陛下......」


 乗合所はたくさんの人が出入りしざわついていたが、ソリにはもう
 周りの音も景色も目に入らなかった。

 時が止まってしまったかのように、二人はお互いを見つめる。

 ふれあっていた指先をからめ、セヴェリはソリの手をつよく握った。


   「国王とは不便なものだ、好きになった女一人側にはおけぬ。
    もし私が国王ではなく、ただの男だったら、ソリ、
    そなたは私を受けいれてくれたか」


 胸がふるえる。

 喜びと愛しさで胸がいっぱいになり、ソリの目に涙が浮かんだ。


   「はい、ただ一人、生涯を愛しぬく、ただ一人の人として」


 セヴェリの手がソリの頬にかかり、柔らかく重ね合わされた唇の愛しさに、
 ソリの頬を涙が一雫こぼれおちた。
< 114 / 125 >

この作品をシェア

pagetop