国王陛下の独占愛

 馬車にのるソリを見送ってすぐに出発したのに、途中で吹雪いてきた
 せいで、追いつくはずだったニクラスの馬車には追いつけなかった。


   「急ぐぞ、トゥーレ」

   「はい」


 吹雪の中を急ぎ、砦近くまで来たセヴェリはただならぬ雰囲気を感じ取って
 馬をとめた。

 砦の入り口には、板塀に矢が何本も刺さり、人が倒れている。


   「どういうことだ?」


 セヴェリの言葉にトゥーレはすばやく馬をおりると、油断なくあたりに
 目を配った。


   「陛下はここでしばらくお待ち下さい、様子を見てまいります」


 そうトゥーレが言い、砦の中へと入って行った。

 しばらくして戻ってきたトゥーレの顔はひどく強張っていた。


   「ダコスの兵が砦を襲っています」

   「なに?!」





 剣を手に入った砦の一階は以外にも静かだった。

 敵は砦の上部の階に侵入しているようだ。

 砦に入ったセヴェリのもとへ、馬車の警護をしていた騎兵の一人が
 駆け寄ってくる。


   「陛下、ニクラス様が!」

   「ニクラスがどうした」

   「敵兵の矢を受けられて.....」

   「なんだと!」


 

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