国王陛下の独占愛

 悲しみと苦しみの混じった重い空気に満ちた部屋の中に、兵士が
 一人駆け込んでくる。


   「陛下、砦の守りが破られそうです。
    どうかすぐ、お逃げ下さい」


 その言葉を聞いて、トゥーレがセヴェリを見る。

 だが、セヴェリは動かなかった。

 じっと、横たわるニクラスを見つめている。


   「......めだ」


 セヴェリの口からポツリと言葉がもれる。


   「駄目だ、敵に背を向けて逃げ出すわけにはいかない。
    ニクラスを死なせてしまったというのに」

   「しかし、陛下!」


 兵士の言葉を無視し、セヴェリは手に提げていた剣を握り直すと
 くるりと身体の向きを変え、足早に歩き出した。


   「陛下、どちらへ!」

   「戦いだ!」


 部屋を出るころには、セヴェリは駆け出していた。

 後をトゥーレが追ってくる。


 

 砦の上部階では、敵、味方入り混じっての戦いが広がっていた。

 セヴェリは戦いの真ん中に飛び込んだ。
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