国王陛下の独占愛

 剣を振り下ろし、身体をかわし、跳ね上げ、突き......
 セヴェリは夢中で剣をふるった。

 すぐそばにはトゥーレがいて、同じように剣をふるっている。

 切っても切っても、敵は目の前にあらわれる。


   「陛下、やはり敵方の方が優勢です。
    ここは退いてください」


 敵兵の攻撃をかわしながら、トゥーレが言う。

 ここで死ぬわけにはいかない、だが......。

 セヴェリが躊躇した時だった。

 上部階に登ってくる階段付近で、叫び声があがった。

 続けざまにおこった叫び声の後から、何か身の低い、すばやく動くものが
 戦いの場に飛び込んでくる。

 それは、狼の群れだった。

 狼たちは、ダコスの兵を襲い始めた。

 肩に噛みつかれ、喉を食い破られ、ダコスの兵が倒れていくのを
 セヴェリは呆然とながめた。


 なんだ? いったいどういうことだ?


 狼は過たず、敵国ダコスの兵だけを襲っている。
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