国王陛下の独占愛

 どれだけの時が流れたのかはわからなかった。

 気がつけば、ダコスの兵は皆倒れ、立っているのは味方ばかりに
 なっていた。

 いつの間にか外からの攻撃も止んでいる。



 その時、銀色の毛並みの一頭の獣が現れたのをセヴェリは見た。

 狼に似ているが、狼よりは一回り小さい。

 あれは.....。

 銀色の毛並みの狼によく似たその犬は、くっと頭をあげ、あたりを
 見回すように立つ。

 するとその場にいた灰色の狼達が、みな尾をたれ、静かな足取りで
 歩き始めた。

 銀色の犬の前を通って、狼達が一頭、また一頭と階段口に消えていく。

 最後に残った銀色の犬は、じっとセヴェリを見ると、くるりと向きを変え
 階段をおりていった。

 セヴェリははっと我にかえると、走り出した。


   「陛下!」


 トゥーレが後からついてくる。

 セヴェリは階段をおり狼達と銀色の犬を探したが、その姿はもう
 何処にもなかった。

 
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