国王陛下の独占愛
弾かれたように、ルカがソリの側に足早にやってきて、そっと耳打ち
をする。
「国王陛下だ、ソリに会わせろと仰って」
座っている人の一番近くに立っている小太りの男が咳払いをするのが
聞こえ、
「娘がきたのなら、こちらへ」
と言った。
その言葉にピンと背筋を伸ばしたルカがソリをひっぱっていく。
ソリは困惑していた。
なぜ、国王が私に会いたいなどというのだろう
国王の前まで来たソリは床に視線をおとしたまま、淑女がやるように
作法に則って礼をした。
青灰色の瞳が、じっとソリを見つめる。
しばらくの沈黙ののちに、中低音のよく通る声が聞こえた。
「礼ができるのか、宿屋の娘だと思っていたが違ったようだし
お前は貴族の娘なのか」
「貴族ではありませんが、礼儀作法の勉強と教育は受けました」
「ふむ、親の仕事はなんだ」
「両親ともにいません。祖父が学者で、長く土地の子供を教えて
いましたので、そのおかげで生活しています」
質問はそこまでだった。
またしばらく沈黙が続き、国王が口をひらいた。
「私を覚えているか? 顔をあげて私を見よ」