国王陛下の独占愛

   「なんだと?ダコスの兵が急に撤退した?」


 ザクロスの従兄弟のニガロはそう言うと立ち上がった。

 どういうことだ?

 計画では、ダコスはニガロの私兵が砦についたところで退くことに
 なっていたはずだ。


   「陛下はどうなった?」

   「矢を胸にうけて倒れられたようです」


 ニガロは考えた。

 すぐにとってかえし、兵は解散させよう。

 陛下が傷を負ったか、死んだのであれば話はまたちがってくる。

 だが、そう考えていた頃、ニガロが偵察のためにはなっていた
 私兵の一人が砦の兵に捕まり、ニガロが兵を集めて砦近くにいることは
 セヴェリの耳に届いていた。

 すぐにニガロは捕らえられ、陰謀の内幕はすべて明らかにされた。




 首謀者であるザクロスは捕縛の手が伸びる前に、毒を飲んで死に、
 民相をはじめとする主だった領相一派は失脚した。

 計画の内容を知り、ザクロスに手を貸していたアミラ妃は、息子
 ニクラスを亡くしたことを配慮し、直接罪には問われなかったが
 生涯、北の離宮をでることはなく、三年後、病で亡くなることになる。
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