国王陛下の独占愛
ソリはゆっくりと伏せていた顔をおこす。
赤い立ち襟のテイルコートの上に、銀の刺繍のパール色のマントをまとい
辺りを払う威厳をたたえて、端正な顔立ちの青年が、ソリを見つめて
座っている。
そのけぶるような、青灰色の瞳に憶えがあるような気がソリはしたが、
それでも記憶は湧き上がってはこなかった。
憶えていませんと言ってよいのだろうか?
しかし、私が国王陛下にあったことなど、あるはずがないとソリは
思う。
なにかの間違いではないだろうか?
セヴェリは、目の前に立ち、自分をしっかりと見つめ返してくる
藤色の瞳を見た。
あぁ、この瞳だった、とセヴェリは思う。
だが、目の前に立つ人は記憶の中の少女とは、少し違っていた。
背が伸び、ふっくらと丸かった頬は、少し引き締まって小さな顎へと
続いている。
肌は滑らかに白く、蜂蜜色の美しい髪もそのままだが、月日は少女を
一人の女性へとかえていた。
「この席に座る私に、お前は説教をした。」
突然のセヴェリの言葉に、ソリはもちろん、それを聞いた誰もが
唖然とした。
セヴェリの後ろに控えていた、内宮官長のパルヴォなどは、
ぽかんと口を開けている。