国王陛下の独占愛
「今日はこちらの方に来ることができたので、寄ったのだ。
トゥーレとの約束もあったしな。」
そう、セヴェリが言い、パルヴォのとなりに立つ国王付き武官の
トゥーレを見る。
トゥーレは頭を下げて、会釈をした。
「トゥーレ殿との約束といいますと?」
内宮官長のパルヴォがたずねる。
「ここのペルカを食べさせてやるという約束だ。どうだ、パルヴォ、
お前も食べぬか」
「いえ、私は、そういった庶民の食べ物は......」
そう言いかけたパルヴォをセヴェリがジロリと横目で睨む。
「あ、いえ......そのぅ......」
パルヴォは言葉をにごすと、小太りの身体を小さく縮めた。
「パルカを焼いてもらおうか、今日は文無しではないぞ」
そう、セヴェリが言い、宿屋の小さな厨房は、上を下への大騒ぎになった。
あつあつの焼きたてのパルカに、宿屋の中にいた者も、庭にいた者も
みな舌鼓をうち、”うまい”と唸る。
その味に驚き、美味しさに頬を緩める様子をセヴェリは満足げに見やった。