国王陛下の独占愛

 そんなセヴェリの前に、コトンとカップが置かれた。

 訝しげにカップを見、そしてそれを置いたソリを見たセヴェリに
 ソリが言った。


   「疲れをとり、リラックスさせる効果のあるお茶です」


 セヴェリは手を伸ばしてカップをつかみ、口をつけて一口飲む。

 確かに良い香りがして、身体にはいっていた力がゆるく解けていくようだった。

 セヴェリは、初めてここに来た時も、お茶を飲んだことを思い出していた。

 あの時のお茶もそうだった、身体に染み渡っていくようだった

 カップを口から離し、じっとカップの中を見つめていたセヴェリが 
 口を開いた。


   「どうだ、そなた、城に来て、私のためにパルカを焼き、
    私のために、お茶を煎れぬか」


 それは静かな言葉だったが、その言葉の内容に、そこにいたものは
 みなぎょっとなり、辺りはしんと静まりかえった。


   「どうだ?」

   「あぁ、なんて名誉なことだろう!」


 女将のマルロがそう叫んで、また主人のルカに頭をはたかれた。

 ソリが口をひらくより早く、口をひらいたのはパルヴォだった。


   「陛下、城にはちゃんとしたところから雇い入れた料理人が
    おります。」

   「料理人とは別だ、私の心身を整えるためにお茶を煎れる......
   薬師のようなものか」

   「それにしてからが、ちゃんと代々その役を仰せつかった者が
    城にはおります。」

   「その者たちが、私のためにお茶を煎れてくれたことがあるか?」

   「それは、陛下が命じられれば、いくらでも......」

   「私が命じずとも、必要な時に必要な薬草を使い、
    お茶を煎れるものは居るまい」

   「......」
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