国王陛下の独占愛
「女将さん、まず一回目が焼けたから。」
厨房の方から、そう声が聞こえ、女将が答える。
「ありがとうよ、ソリ。今日は、あと2回ほど焼いておくれよ。」
「はーい」
あいかわらず、何かが焼ける良い匂いが漂ってくる。
そしてカチャカチャと、食器か何かが触れ合う音。
ああ、いいな、とセヴェリは遠くなっていく意識の中で思った。
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眠っていた意識がもどったのは、目の前のテーブルに何かをコトリと置く気配がしたからだ。
ぼんやりと目を開け、セヴェリは前を見た。
目の前には眉間にしわを寄せ、唇をぎゅっと引き結んだ娘がいて、こちらをじっと見ていた。
蜂蜜色の髪をひとつに結んで背中に垂らし、薄い藤色の瞳が避難するようにゆがめられている。
「コーヒーが入ったから持ってきたけど」
目の前の娘がそう言うのを聞いて、セヴェリはテーブルの上を見た。
熱そうなコーヒーの入ったカップが目の前に置かれている。
「ああ、ありがとう。」
セヴェリは礼をいって、周りをみまわした。
どれくらい眠っていたかわからないが、食堂はもう始まっているようで、客が二人ほどそれぞれの席に座って
朝食を食べていた。