国王陛下の独占愛
ネヴァド=ヴィラ王国は国王の下に、最高位である領相をおき
その他、兵相、民相などの役官が、貴族たちより選ばれて役についている。
その者たちは、能力如何にかかわらず、家柄や代々その役についているか
ということで選ばれており、現領相の率いる一派が、国王を拉ぐほどの力
を持っていた。
そのことを、国王セヴェリは苦々しく思っているが、前国王が長く病気
だったこともあり、政治は狡猾な領相の手に握られている。
領相たちもまた、セヴェリの存在を疎ましく思っていた。
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「最近の陛下の合議での様子、あれはなんですかな」
酒の盃を傾けながら、民相のヒュウルが言う。
城下の酒房の一室には、領相のザクラス、民相のヒュウルをはじめ
領相一派の4人が顔をそろえていた。
「われらが話しを躱しても、冗談を交えながら追求の手を緩めない。
おかげで、なんとかごまかして搾取するはずだった小麦10カロは
うまくいかなかった。」
「少し前まで、われらが話しを躱しはじめると、すぐに怒ったように
なって黙り込んでしまわれるか、話しを打ち切ってしまわれていた
のに......」
民相補佐のボナスもまた、そう言って苦い顔をした。
話を聞きながら酒を飲み、領相は思う。
セヴェリが国王の座についてまだ3年。
元より王子の頃から政治に関心のあるふうではなかった。
それどころか放浪癖があり、あれは愚王になると噂されていた。
だが、最近の王は、政治に関心をもち、我らが持っている権力を
奪おうとしている。
危険だ......。
口許まで持っていき止めていた盃をぐいっと傾けて一気に酒を飲み干すと
領相はもう一度強く思った。
危険だ、このままではいけない。