国王陛下の独占愛
ソリがセヴェリの言葉に驚いているの感じながら、セヴェリは
横に向けていた顔をゆっくりとソリの方に戻した。
「お前は私のための薬師だ、私のためにだけお茶を煎れればよい」
その言葉にソリはさらに目を見開いてセヴェリを見た。
ソリのまっすぐな視線を受け止められず、セヴェリはまたぷいと
横を向いた。
コポコポとお湯が沸く音だけが聞こえ、沈黙が室内を満たす。
「心の狭い王だと思ったか」
横を向いたまま、セヴェリが唐突に言った。
「え?」
「お茶ぐらいいいだろうにと思っただろう」
いつものように尊大な言い方なのに、子供が必死に親の機嫌をさぐって
いるようにも聞こえ、ソリは静かにかぶりをふった。
「いいえ、私は陛下のためにお茶を煎れよとこの城によばれました。
陛下がお茶を飲んで身体を健やかに保たれるだけでなく、気持ちも
心も穏やかにすごされるのを私は望んでおります。
陛下が自分のためだけにと仰るのなら、そういたしましょう」
セヴェリはソリを見た。
追従やおべんちゃらでそう言ったのではない、ソリの表情を見て
セヴェリはニクラスやニクラスの母、アミラ妃に抱いている
凝り固まった気持ちがふっと緩んだように感じた。
ふっとセヴェリは片頬だけで笑い言う。
「そうだ、そなたは、私のためにだけお茶を煎れるのだ」
そうやって尊大にふるまわなければ、胸の中に湧き上がる
穏やかな気持ちに、いつもの自分を見失いそうだと
セヴェリは思った。