国王陛下の独占愛
(4)
ソリと祖父のクルト、愛犬のシルバーが城で暮らし始めて、2ヶ月が
たとうとしていた。
2〜3日続いた雨が上がり、ソリは南にむいた窓をいっぱいに開けると
窓辺のベッドに寝たきりの祖父のために、部屋の空気を入れ替えようとした。
大気が雨で洗われて、陽の光の粒子が見えるのではないかと思うほど
空気が澄んでいる。
ベッドに横になり、窓辺に顔を向けていた祖父のクルトが突然なにか言った。
「えっ、なあに?」
クルトの言葉は聞き取りづらい、祖父の口許に顔をよせソリがクルトの言葉を
聞き取ろうとする。
今度は、はっきりと聞こえた。
「気が......整ってきている」
ソリは祖父が雨上がりのこの上天気のことを言っているのだと思った。
全て万物は、気を発し、その気がうまく組み合わさることで、物事が
回っていく、と祖父クルトはソリに教えてくれた。
ソリが薬草を扱えるのも、人の表情や身体の動きを見て、体調を知ることが
できるのも、すべて祖父クルトから教わったことだ。
クルトは、薬学、植物学、地質学、天文学、ありとあらゆることに造詣が深く
そのうえ、今はもう数がすくなってしまった魔術が扱える人でもあった。
「今日は......」
「はい」
「少し術を......使って......みよう」
クルトの言葉にソリは驚き、心配そうに祖父を見やった。
術をつかうことは、もう最近はなくなっていた。
それなのに、どうしたのだろう。
「ろうそくを......持ってきなさい」