国王陛下の独占愛

   「国王陛下がお待ちです」


 案内の者にそう言われ、もうすっかり夜の闇が辺りを覆いつくしている中を
 ソリは城に向かう。

 いつもの部屋に向かうと思っていたのに、案内の者は城内の奥へと
 ソリを導いていく。

 着いたところは国王セヴェリの寝室だった。

 戸惑いながら部屋に入ったソリを、夜着に着替え、ガウンを羽織っただけの
 セヴェリが出迎える。

 ソリを案内してきた者はすぐに部屋を出ていき、部屋の中には
 ソリとセヴェリだけになった。


   「どうした、突っ立っていないで、お茶の準備をしたらどうだ」

   「寝る前ですので時間がないと思い、煎じたものをお持ちしました
    カップにお注ぎしてもよろしいですか?」


 セヴェリの眉がピクリと動く。

 ソリは慌てて目を逸らした。

 セヴェリが眉をピクリと動かす時は、なにか気に入らない時だと
 ソリはこの2ヶ月のうちに学んでいた。


   「なんだ、煎じる道具を持ってきていないのか」

   「いえ、持ってきていないわけではありません」

   「では、いつものようにここでお茶を煎れるのだ」

   「しかし、時間がかかりますが」


 しかし、セヴェリはソファに座ると、傍にあった本を手に取り
 言った。


   「心配ない、本でも読んで待っている」


 
< 30 / 125 >

この作品をシェア

pagetop