国王陛下の独占愛
そして、さっさと本を開いて寛いだ様子で読み始めてしまった。
これでは、お茶を煎じる他ない。
ソリは持ってきた籠の中から、いつもの道具をだし、お茶を
煎れる準備を始めた。
しばらくして、こぽこぽとお湯が沸き、ソリはひとつかみの薬草と
干した花びらをお湯の中に放り込んだ。
ふわりとすぐに薬草と花の匂いが漂いはじめる。
夜のお茶は抽出を弱めにしたいため、ぬるめのお湯でじっくりと染み出させる
部屋の中には、お湯が沸く音と、セヴェリがページをめくる音だけが
聞こえていた。
ソリはふと顔をあげて、目の前に座るセヴェリを見た。
国王らしい風格を漂わせるいつもの上着を脱いで、夜着にガウンの
簡素な姿をしているせいか、セヴェリはいつもよりは気楽に見えた。
国王とはいえ、まだ若いのだ。
目の前で本をめくっている姿は、年相応の若者の姿であり、
普段は厚い仮面で隠している素のセヴェリがのぞけそうな気がする
とソリは思った。
「なんだ、そんなに熱心に私を見て。国王とはいえ、
無防備な男の姿に目を奪われたか」
本に目を向けたまま、突然セヴェリがそう言った。
セヴェリを見つめていたのは、確かなことで、当たらずとも近い
指摘をされて、ソリは慌てて目を逸らした。