国王陛下の独占愛

   「見とれていたわけではありません」

   「そうか?私ほどの男前ならば、見とれるのも無理はないが」


 口許にのぼってくる笑みを抑えきれず、ソリは目を逸らしたまま
 手で口許を隠した。

 まぁ、確かに、セヴェリは魅力的な顔立ちをしている......とソリは思った。


   「笑ったな」

   「いいえ、笑っておりません」


 手を口許からはなし、笑みを隠した澄まし顔でセヴェリを見たソリは
 次の瞬間、こらえきれずに笑い出した。

 まるで、友達の失敗を見つけた悪戯小僧のような顔でソリを見ている
 セヴェリの顔を見たからだ。


   「ほらみろ、笑った」


 そう言うセヴェリも大きな笑みを顔いっぱいに広げている。

 今まで見たことのない開けぴろげなセヴェリの表情に、
 ソリの胸がトクンと音をたてた。

 ソリは慌てて、視線を手元の炉にもどすと、ゆっくりとお湯をかき回して
 煎じた薬草を取り出すことに忙しいというふりをした。

 そして綺麗な布で漉してお茶をカップになみなみと注ぐ。


   「出来上がりました」


 そう言って、カップをセヴェリの前に置いた。

 差し出されたカップを手に持ったセヴェリは、まだどこか可笑しそうに 
 顔を綻ばしている。


   「笑うなどと、国王に対して失礼だとは思わぬか、不敬罪だ」
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