国王陛下の独占愛
家の戸がトントンと叩かれるのを聞いて、ソリは訝しんだ。
こんな時間にこの家を訪ねてくるものなどいない、国王陛下の
急なお呼びだろうか?
そう思いながら戸を開くと、侍女の服を着た、きつい顔をした
中年の女が立っていて、怒ったような口調で告げた。
「アミラ様がお呼びだ、ついてくるように」
いつもお茶を煎れに行くのとは違う城の棟につれてこられ、きらびやかに
飾られた部屋に入ると、ソリは膝を折り、礼をした。
目の前には、美しい宝石で飾られたドレスを着込み、金髪を見事に結い上げた
華やかな女性が座っている。
アミラ妃だった。
アミラもまた、侍女がつれてきた、若い女をじっと見つめた。
華やかさはないが、薄い藤色の瞳が印象的な娘だ。
礼儀作法に則って淑女の礼をしたが、着ているものは質素で、貴族の娘には
見えない。
「そなたが薬師の娘か 名はなんという?」
「ソリ=マテイラと申します」
「陛下のためにお茶を煎れるのだそうだな」
「はい」
「非常に良いお茶を煎れるとか、息子ニクラスも一度飲んでみる
ようにと言っていた。
どうだ、私のためにお茶を煎れぬか」
アミラ妃の言葉に、ソリは伏せていた瞳をゆっくりとあげ、はっきりとした
声で答える。
「それは、できません」
ソリの口からでてきた断りの言葉にアミラ妃は目を見開いた。
「できぬと申すか」
「はい、申し訳ありません」